リアルタイム土砂災害警報システムとは?

リアルタイム土砂災害警報システムは、危機管理型土砂計(ジオフォン)と水位計を利用して、常時土砂量と水位(水量)を観測し、異常な土砂量を検知した際に必要な場所に警報情報を配信するシステムです。このシステムは、降雨量や土壌雨量指数だけでは予測が難しい土砂災害に対応し、ワイヤーセンサーの誤作動や切断のリスクを回避することができます。本システムに搭載されている危機管理型土砂計は、土砂がセンサーに衝突する音をマイクロフォンで検知し、その音圧エネルギーを計測して移動土砂量に変換する装置です。これにより、山腹崩壊等から流出する水位と土砂量を常時監視し、人命を守るための早期警戒を可能にします。

リアルタイム土砂災害警報システムの特長

リアルタイム土砂災害警報システムの特長をご紹介いたします。
まず、本システムは、従来のハイドロフォン流砂観測技術を活用して、省電力化、オンライン化、コンパクト化を図った機器システムであり、ソーラー電源を使用して稼働いたします。このシステムでは、危機管理型土砂計(ジオフォン)と水位計などにより土砂量や水量を常時計測し、観測データはクラウドサーバーにアップロードされます。

これにより、データの蓄積やリアルタイムでの閲覧・状況監視が可能です。異常な土砂量や水位水量を検知すると、警告が表示され、必要な個所に警報情報が配信されます。さらに、現場状況はカメラ映像で確認でき、土砂量等の指標は3段階(注意・警戒・避難)で閾値が設定されており、閾値を超えると、必要な個所に警報がメールで配信されます(添付図参照)。
上記の特長を踏まえて当社では本システムを土砂災害の危険度が高い場所へ配置することを推進しています。

リアルタイム土砂災害警報システム構成

リアルタイム土砂災害警報システムのシステム構成をご紹介いたします。

センサー部&カメラ部

・危機管理土砂計(マイク・音圧積分)
・圧力式水位計(水位・電圧値)
・カメラ(静止画像)

MCU部

・データ処理
土砂量変換、水位・流量変換
・カメラ映像処理
・データ蓄積
・制御(警報判定、トリガースイッチ等)

通信部

・時系列データをクラウドに送信
・警報メール送信

電源部

・ソーラーパネル
・コントラー&バッテリー

リアルタイム土砂災害警報システム設置状況

本システムを広島県大屋大川にて設置した際の現場の状況をご紹介いたします。

防災IOTデバイスシステムによる状況監視

本システムでは、時系列の水位(流量)・土砂量のデータもちろんのこと、維持管理上重要なソーラーによる供給電源・電波強度・機器温度を監視することができます。維持点検作業の効率化を図って現地に行かなくてもどこからでも現地状況を監視することができます。

下記にて広島県大屋大川にて監視を行った際のデータ画面をご紹介いたします。

クラウドサーバーにデータをアップロード

水位(流量)&土砂量の時系列図

供給電圧・基板温度・電波強度の監視

クラウドサーバーに河川映像をアップロード

流砂モニタリングおよびリアルタイム土砂災害警報システムへの活用

危機管理型土砂計を用いた流砂モニタリングおよびリアルタイム土砂災害警報システムの活用例は以下の通りです。

国交省/砂防事務所の「ハイドロフォンから危機管理土砂計への置換事業」

パイプ型ハイドロフォンは国交省砂防事務所により全国70箇所に設置済みです。今後の新規設置箇所や破損個所への置き換えに設置が期待できます。
また土砂災害後の緊急工事時の工事現場安全対策用にも本システムは効果的です。

国交省等の「ダム堆砂対策のための流砂モニタリング事業」

堆砂率が80%を超えている既存ダムが全国30箇所以上あり、これらのダムにおいても本システムの導入は効果的です。

防災事業の「土砂災害による人命と事業リスクに対する防災・減災事業」

土砂災害によるリスクを軽減するために、本システムを活用することで、早期の避難警報発令など防災・減災事業を展開することが可能となります。

海外案件「地滑り監視・フラッシュフラッド対策事業」

海外での実績として、マレーシアサイエンス大学(USM)と共同研究したマレーシアでの地滑り監視や京都大学と共同研究し、本システムを2基設置し観測したオマーンのワジ(砂漠の涸れ川)のフラッシュフラッド早期警戒システム開発などがございます。

維持管理マニュアル

危機管理型土砂計(ジオフォン)には、砂礫がセンサーに衝突する音を検知するマイクロフォン、その音圧エネルギーを計測している積分回路が搭載されています。
パイプ型やプレート型ジオフォン部に多量の砂礫等が衝突すると、パイプやプレート面が変形し、砂礫の衝突音に異常値が発生する場合があります。
そこで、当社では、ジオフォン出荷時、設置時及び点検時に、衝突音の正常性を確認するためにセンサー部の落下テストを行っています。また、現地点検のために維持管理マニュアルを作成しご提供しています。

砂礫の衝突音(積分音圧)から土砂量への換算式(キャリブレーション式)は、現地もしくは室内水路流砂実験を行って作成しています。

リアルタイム土砂災害警報システムの運用イメージ

リアルタイム土砂災害警報システムの運用イメージをご紹介いたします。
本システムは降雨に伴う土砂移動量を監視し、異常な土砂流出や急変する土石流の前兆現象をキャッチします。
広域的な警報情報と組み合わせて、水位と土砂量の観測値から3段階(注意・警戒・避難)の早期避難情報を発信し、災害リスクを最小限に抑えることができます。

注意・警戒段階

・大雨や洪水警報、土砂災害警戒情報が発令され、水位の上昇や異常な土砂流出が検知されると、自動的に避難情報が発信されます。
・検知された土砂量から、上流域での斜面崩壊や土石流の危険サインを事前に検知いたします。

避難段階

水位の上昇や土砂流出の増加が続き、最大限の流砂量に近づいた場合、避難情報を発信いたします。

避難解除段階

避難後も、洪水ピーク後の水位低下に伴い、流出土砂の状況を監視し、避難解除のタイミングを判断いたします。

土砂災害警戒区域での土砂災害イメージ

土砂災害警戒区域での土砂災害イメージをご案内いたします。
現在日本では、土砂災害における危険区域としていされている場所が約70万箇所ございます。

リアルタイム土砂災害警報システムの技術的背景

開発背景

本システムの技術的背景をご紹介いたします。
本システムは平成30年&令和3年度先端的防災技術実用化支援事業(公益財団法人東京都中小企業振興公社)の採択を受け、洪水・土砂災害対策に向けて開発された先進的な防災技術であり、東京都立産業技術研究センターの検査を合格しています。

システムに使用しております、流砂モニタリング技術は、国交省国土技術政策総合研究所砂防分野での流砂水文技術を活用し、さらに、中央大学理工学部T教授の指導のもと、室内流砂水路実験を行って技術開発を行っております。

2019年から国土交通省の支援を受けて広島県大屋大川にて実証実験を実施いたしました。
海外では、マレーシアサイエンス大学(USM)との共同研究により、地滑り対策としてマレーシアに1基設置され、また、京都大学防災研究所S研究室との共同研究により、中近東オマーンにワジ(砂漠の涸れ川)のフラッシュフラッド対策として2基が設置され、観測を行いました。

推薦者の声


毎年、長雨や集中豪雨により頻発する土砂・洪水氾濫は、洪水量だけではなく流出土砂量が被害の拡大に大きく起因している。リアルタイム土砂災害警報システムの特長は、常時、水位(流量)と同時に移動土砂量を観測していることである。移動土砂量の観測は、川に流れている砂礫が鉄製のセンサーに衝突する音を、内蔵しているマイクロフォンで拾い、その音圧エネルギー(電圧)を積分して移動土砂量に変換する新技術である。この新技術を開発するにあたっては、砂礫の衝突音の特性と移動土砂量との関係を把握することが重要であった。私は開発チームに対して専門的な室内流砂水路実験と解析手法の指導を行いました。現状では大雨時に土石流や斜面崩壊等がいつどこで発生するか予測できない。従って、常時流域監視を行い、災害発生の危険を事前にキャッチすることが災害の拡大を防げる。さらに本システムは、水位や土砂量を指標として早期警報を行う機能を有していることから、被災者の数を最小限に抑えることが可能であると思われます。本システムの活用は減災のための効果的なソフト対策の一つであると考えています。


近年、気候変動に伴って中東や北アフリカ地域の乾燥・半乾燥地域でフラッシュフラッドが頻発し、土砂・洪水氾濫により多くの人命が失われています。ワジ(涸れ川)で発生するフラッシュフラッドは洪水ではあるものの急激に流量が増加する土石流に近く、現象把握のための観測実績や過去のデータに乏しいのが現状です。そこで、ワジにおける降雨・流出現象や洪水に伴って増加する土砂流出現象を解明していくことが重要です。
リアルタイム土砂災害警報システムは水位および土砂量をリアルタイムでモニタリングすることが可能で、ワジのフラッシュフラッド現象の解明に役立ちます。また、上流で発生した異常現象を検知して避難警報等として通報する機能が装備されており、今後、ワジのフラッシュフラッド早期警戒システムとしての活用が期待できると考えています。


当社は、気象観測機器・システムのメーカーですが、昨今多発する自然災害の防災監視ソリューションの1つとして、このリアルタイム土砂災害警報システムに着目しております。今後、販売促進活動や展示会などのイベントを通じて、防災関係者にこのシステムの有効性、必要性を説明して導入促進活動を行う予定をしております。本システムの利用に関する疑問や懸念に対する丁寧な説明やサポートをご提供することで、より多くの地域での採用を推進し、本システムが多くの場所に設置され、土砂・洪水氾濫から人々を守る一助となることを願っています。

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